子供の成績を伸ばすために、塾と家庭教師、どちらが我が子には合うのか。
中学受験、高校受験、大学受験の時期になると、多くの親が悩むテーマではないでしょうか。私自身、二人の娘の受験で何度もこの判断を迫られてきました。
そして振り返ってみると、私は塾や家庭教師の選択を「父親の独断」で進めてしまった場面が少なくありません。手痛い失敗もありました。一方で、結果的にうまくいった選択もあります。
この記事では、過干渉だった父親として、二人の娘の塾選び・家庭教師選びを振り返り、後から気づいた3つの判断軸をお伝えします。完璧な答えがあるわけではありませんが、同じように悩んでいる父親の何かの参考になれば嬉しく思います。
塾と家庭教師、それぞれの一般的な特徴
まず、塾と家庭教師の特徴を簡単に整理しておきます。
集団塾
– 同じ目標を持つ仲間と一緒に勉強できるため、競争心が刺激されやすい
– カリキュラムが決まっており、受験ゴールに向けて計画的に進めやすい
– ペースが速いため、ついていけないとフォローが難しい
個別指導塾
– 1人の講師に対して1〜3人の少人数で進む
– 子のペースに合わせて指導してもらえる
– 集団塾より授業料が高めになる傾向
家庭教師
– 完全マンツーマンで、子の理解度に合わせて柔軟に指導してもらえる
– 通塾の移動時間がなく、時間の融通が利きやすい
– 相性が悪ければ講師の交代を相談できる
– ライバルが目に見えにくく、競争心が育ちにくい面もある
費用は一般に「集団塾 < 個別指導塾 < 家庭教師」の順で高くなります。
ここまでは調べれば誰でも書けることですが、私が伝えたいのは、ではどうやって我が子に合う形式を選ぶのか、という判断軸の方です。
判断軸1:子の意向を出発点にする
最初の判断軸は、何より子供自身の意向を聞くことです。
うちの上の娘は、中学生のころから「塾に行ったら負け」と口にしていました。自分の力で勉強できるはず、という気持ちがあったのでしょう。私はその意向を尊重し、上の娘は中学・高校を通じて塾には通いませんでした。
高校2年の夏、私は「せめて一度くらいは」と思い、ある大手予備校の夏期講習に行かせました。しかし本人は「あまり効果があったとは思えない」と感想を漏らしました。
そして高校3年の受験期、私が「予備校に通ったらどうだ」と勧めたとき、上の娘は頑なに拒否しました。「塾に行ったら負け」という気持ちと、夏期講習で良い印象を持てなかった経験が、重なっていたのかもしれません。
私は焦りました。受験までもう時間がない。塾も予備校もダメだと言う。どうすればいいのか。
ところがある日、上の娘の方から「家庭教師なら、いい」と言ってきたのです。私はすぐに大手の家庭教師派遣サービスに依頼しました。
このとき、私は一つ大事なことを学びました。親が一方的に「これがいい」と決めて押し付けても、子は動かないということです。子の側から「これならやれそう」という言葉が出てきたとき、その意向を出発点にして動く。それが第一の判断軸でした。
裏を返せば、私は予備校の選択肢を上の娘に押し付けようとして、何度も失敗していたとも言えます。これは 看板記事 でも書いた「先回りして決める」という過干渉の典型的なパターンでした。
判断軸2:子の特性と指導形式の相性を見極める
二つ目の判断軸は、子の特性と指導形式の相性です。
これは一般論として言われていることでもありますが、私自身、二人の娘の対照的な体験から痛感したことでもあります。
下の娘は中学3年の春から、地域でよく名前を聞く進学塾に通い始めました。本人は真面目に通っていましたが、なかなか成績は上がりませんでした。
そこで中学3年の秋から、大手の家庭教師派遣サービスに切り替えたところ、驚くほど効果が出ました。定期テストでは5教科で400点台を取るようになり、無事に志望校に合格できたのです。
下の娘は高校に入ってからも、同じ派遣サービスの先生に理系科目を見ていただきました。定期テストで安定して良い成績を収め、最終的には指定校推薦で大学に進学できました(指定校推薦の仕組みについては、別記事「指定校推薦は高1から始まっている?」でも詳しく書いています)。
下の娘にとっては、明らかにマンツーマンの家庭教師という形式が合っていたのです。
一方、上の娘の場合は少し違います。先ほど書いたように、上の娘も同じく家庭教師にお願いしました。先生は熱心で、私の目から見ても上の娘との相性は悪くなかったように見えました。しかし結果的に、上の娘は1年目の受験で希望していた大学には届きませんでした(その理由は、形式の問題ではなく別のところにあったと考えています。詳しくはまた別の記事で書く予定です)。
ここから私が学んだのは、「下の娘に家庭教師が合ったから、上の娘にも家庭教師」という単純な発想は、必ずしも正解ではないということです。同じ形式でも、子のタイプや状況によって結果は大きく違う。子一人ひとりの特性を見極めて、形式を選ぶことの大切さを、私は遅ればせながら理解しました。
調べてみると、一般に塾向きと言われるのは「競争心がある」「学習習慣がついている」「自分から質問できる」タイプ、家庭教師向きと言われるのは「マイペース」「人見知り」「分からないところを質問しにくい」タイプだそうです。これも参考になります。
判断軸3:塾・教材と地域の受験範囲のミスマッチに注意
三つ目の判断軸は、塾の教材・カリキュラムが、子の受ける受験の範囲とずれていないかを確認することです。
下の娘が中学3年で通った塾は、地域ではよく知られた塾でした。私は「有名な塾だから、きっと大丈夫だろう」と単純に考えました。しかし実際にテキストを見ると、難易度がかなり高く、地元の高校受験の出題傾向と微妙にずれているような印象を受けました。
下の娘自身も「先生は熱心だけど、テキストが学校とちょっと違う」と感じていたようです。結果として、費用と時間をかけた割には成績は伸びませんでした。
この経験から私が思ったのは、塾を選ぶときに「有名だから」「大手だから」だけで決めてはいけないということです。地元の受験事情に合っているか、子が受験する学校のレベルや出題傾向と釣り合っているかを、親自身が確認する必要があります。
似たような失敗を、上の娘の予備校選びでも犯しています。私は自分が学生だった時代の感覚で「予備校といえばあそこ」と思い込み、夏期講習を選びました。しかし、今では別の大手予備校(東進ハイスクールや河合塾など)の方が現役高校生・浪人生から支持を集めているという声も耳にします。私が知識をアップデートしていなかったために、最初の予備校選びを誤った可能性があるのです。
親は、自分の時代の常識で塾や予備校を判断しがちです。世代が変われば、教育サービスの主流も変わる。これは、塾選びだけでなく、進路選びや受験戦略全般に通じる教訓だと、今では思っています。
実は、私はこの「自分の時代の感覚で決めつける」癖を、模試の見方でも犯していました。詳しくは別記事「進研模試の偏差値はあてにならない?」でも書いていますが、親の思い込みは塾選びだけでなく、子の進路に幅広く影響します。
まとめ:3つの判断軸を振り返って
私の二人の娘の体験から見えてきた3つの判断軸を、改めて整理します。
- 子の意向を出発点にする — 親が一方的に決めず、子の側から「これならやれそう」という言葉が出てくるのを待つ
- 子の特性と指導形式の相性を見極める — 同じ形式でも、子のタイプによって効果は違う。一人ひとりを見る
- 塾・教材と地域の受験範囲のミスマッチに注意する — 「有名だから」で選ばない。親自身も情報をアップデートする
振り返ってみると、私は3つすべてで何かしらの失敗をしてきました。だからこそ、同じ立場の父親には、私のような遠回りをしてほしくないと思います。
ただし、これも「べき論」を語りたいわけではありません。子の性格、家庭の事情、地域の選択肢、すべて違います。大切なのは、3つの判断軸を頭の片隅に置きながら、目の前の子をよく見て選ぶことだと思います。
塾と家庭教師の選択は、子供の受験を左右する大きな決断です。だからこそ、親はつい先回りしてしまいがちです。佐々木正美さんの『子どもへのまなざし』に教えられたことの一つに、「子の後ろを歩く」という姿勢があります。塾選び・家庭教師選びにおいても、まず子の声を聞き、子の特性を見て、それから親としての判断を添える。この順番を間違えないようにしたい、と今は思います(書評記事「『子どもへのまなざし』に教えられた3つのこと」もご参考まで)。
完璧な選択などないのかもしれません。それでも、子の声に耳を傾け、子の特性を見て、自分の思い込みを疑う。この姿勢だけは持ち続けたいと、私自身、修行の途中で考えています。
過干渉、卒業します。

