導入
子供の就活が始まると、親は心配でいろいろと言いたくなります。
業界はどうするのか。エントリーシートはちゃんと書けているのか。面接対策は大丈夫か。内定が出ない時期には、もっと心配がふくらみます。
一方、子からすれば「いま親に言われると困る」と感じる場面が、就活中には何度もあるようです。
どこまで口を出していいのか。どこから先は子に任せるべきなのか。この境界が、親にはなかなか見えにくい。私自身、二人の娘の就活を見守るなかで、何度も口出ししすぎたと反省してきました。
今日は、就活の3つの場面に分けて、過干渉だった父親が学んだ「線引き」を整理します。
これまでお話ししてきた第5記事(エントリーシート)・第8記事(市役所就職)とも繋がる、就活カテゴリの総まとめのつもりで書いています。同じ立場の父親仲間の参考になれば幸いです。
近年の就活と親の関わりの変化
親世代(40代以上)が就活した頃と、いまの就活は大きく違います。
ご存じでしょうか。「オヤカク(親確)」という言葉があります。企業が内定を出した学生に対して、入社について親の承諾を得たかを確認する慣行のことです。マイナビの調査では、子供の内定企業から「オヤカク」を受けた経験のある親が半数を超えていたと報告されています。
さらに、「オヤオリ(親オリエンテーション)」という言葉も生まれています。企業が内定者の親に向けて説明会を開いたり、会社案内を送ったりする動きです。背景にあるのは「親ブロック」(親の反対による内定辞退)の増加。企業からすれば、せっかく出した内定を親の反対で覆されるのは大きな損失だからです。
一方で、政府は2027年春入社からの就職活動ルールに、企業によるオヤカク防止の方針を追加したと報じられています。「親への確認は本人の意思を尊重しない可能性がある」という考え方です。
つまり、いまの就活は、「親の関わりは無視できないほど大きいが、過剰になりすぎてはいけない」という、微妙なバランスのうえに成り立っています。
親世代の感覚で、安易に口を出すのは危ない。かといって、子から相談されたときに突き放すのもよくない。だからこそ「線引き」が大事になるのです。
線引き1:就活開始期 ─ 業界・企業選びは「情報源」までにとどめる
就活が始まる時期(自己分析・業界研究・企業選び)で、親が果たせる役割は何か。
私の答えは、こうです。
「情報を一緒に調べる」までで止める。「これがいい」「あれは無理」と方向を決めるのはNG。
子から「どんな業界がいいか分からない」と相談されたら、一緒に調べる姿勢でいい。でも、結論を出すのは子に任せる。これが基本線です。
注意したいのは、親世代の「大手・安定」という価値観が、いまの若者の感覚とずれていることです。
ある報道では、「保護者が大手企業しか受けることを認めず、大学4年の秋まで内定が取れなかった学生」の事例が紹介されていました。親が方向を決めると、子が「自分で選んだ」感覚を持てなくなります。そして、入社後に少しでも逆境に立たされると、「自分が希望した就職先ではなかったから」と早期退職してしまうケースが少なくないことも、複数の報道で指摘されています。
ここで、私の反省です。
私自身、子の就活が始まったとき、「安定した進路がいいんじゃないか」と漏らしたことがありました。長年自治体で働いてきた立場として、安定の価値を実感していたからです。
でも、振り返ると、それは私の安心感を子に伝えていただけでした。子が「親の安心」を満たすために就職先を選ぶようになったら、長期的にはむしろ子のためにならない ─ そう気づいたのは、ずいぶん経ってからでした。
(公務員(市役所)就職を目指す子供への親の関わりについては、 第8記事「子供の市役所就職を目指すなら、親が知っておくべき3つのこと」 で詳しく書いています)
業界選びの段階で親ができる最大の貢献は、情報源として一緒に調べてあげること。決定権は最後まで子に残しておく。これが、後の就活全体に効いてきます。
線引き2:エントリーシート期 ─ 添削は「依頼があったら、内容ではなく聞き役」に
就活が進むと、子からエントリーシートの添削を頼まれることがあります。
このとき、親はどう関わればいいか。
私の答えは、こうです。
「立派な表現に書き直す」のではなく、「子の経験を引き出す聞き役」に徹する。
採用側の視点で考えれば、面接で見られているのは「自分の経験から、具体的に何が語れるか」です。第8記事でも書きましたが、立派だが借り物の言葉は、面接で深掘りされた瞬間に崩れます。むしろ素朴でも、自分の経験に根ざした言葉のほうが、ずっと強い。
親が手を入れて表現を整えると、かえって採用側に「親の影」が見える危険もあります。子の素朴な表現を、親が立派にしようとすればするほど、子の語る言葉から血が抜けていく ─ そんな印象論です。
ここでも、私の反省があります。
子から就活でエントリーシートの相談を受けたとき、私は対話のなかで、詰問のような問いかけをしてしまいました。「なぜそう書いたのか」「他の言い方はないのか」と、子の言葉を立派にしようと急いだのです。
振り返ると、子が自分の経験を、自分の言葉で整理する時間を、私が奪ってしまった面があったと思います。子は相談したかっただけなのに、私は採点者のように関わってしまったのです。
(エントリーシートと親の関わり方については、 第5記事「子供のエントリーシートの志望動機が幼稚に見える?」 で別の角度からも書いています)
ESの添削で親ができる最大の貢献は、子が話したことをそのまま聞き、「もっと詳しく聞かせて」と促すこと。
文章の表現を直すのではなく、子の経験を引き出すことに集中する。「答え」を渡すのではなく、子が自分で気づくための「材料」を渡す。それが、面接でも崩れない、子自身の言葉を育てます。
線引き3:内定後 ─「オヤカク」が来ても、最終決定は子に委ねる
内定が出る時期になると、企業から親宛てに「オヤカク」が来ることがあります。「お子さんの入社について、親としてどう考えていますか」という確認です。
このとき、親は何ができるか。
私の答えは、こうです。
最終決定は、子に委ねる。
「親ブロック」(親の反対による内定辞退)は一定数あると報告されていますが、興味深いデータもあります。ある学生コミュニティの調査では、「親に反対されて内定を辞退した学生はゼロだった」という結果が出ています。学生は親の反対を表面上の理由にしているだけで、本当の辞退理由は別にあるケースが多いのだそうです。
もう一つ、無視できない現実があります。親が希望する会社に就職できたとしても、入社後に逆境に立たされると「自分が希望した就職先ではなかったから」と、すぐ退職するケースが少なくないと、複数の報道で指摘されています。
つまり、親が反対して子の選択を覆しても、子の就職が安定するわけではないのです。むしろ「自分で選んだ」感覚がない子のほうが、長く続けられない傾向があります。
では、親はどうすればいいか。
「ダメ」ではなく「ここが心配だが、どう考えている?」と問いかける。これが、私のたどり着いた答えです。
不安があるなら、まず親自身がその会社を調べる。知らないまま反対するのが、一番よくない。調べたうえで気になる点があれば、子に問いかける。結論を出すのは子の役目。
私自身、子の選択に対して「もっと別の選択肢が」と思った時期がありました。でも、親の不安を理由に子の選択を曲げるのは、結局のところ、子の自立を妨げる行為です。
口を閉じる勇気を持てるかどうか ─ それが、就活の最後の場面で親が試される一番の課題だと、いまは思います。
まとめ
子供の就活で、親はどこまで口を出していいのか。
答えは、3つの場面で変わります。
業界選びでは、情報源として一緒に調べる。
エントリーシート添削では、聞き役として子の経験を引き出す。
内定後は、最終決定を子に委ねる。
どの場面にも共通しているのは、親の不安や安心を、子に背負わせないことです。
子供が「自分で選んだ」感覚を持って働き始められるよう、親は一歩引いて見守る ─ これが、過干渉だった私が、二人の娘の就活を経て、ようやく学んだ線引きです。
私はまだ修行の途中の身です。それでも、同じ立場で就活中の子を持つ父親仲間に、何か一つでも参考になれば幸いです。
(過干渉な親の特徴と抜け出すための具体策は、 看板記事「過干渉な親の3つの特徴」 で全体像を整理しています)

